2017年5月末、首都大学東京(以下、首都大)の研究チームの観測により、「川越市が日本一暑い街かもしれない」ということが分かりました。
とはいえ、「何で川越?盆地でもないのに…」と思っている方が大半ではないでしょうか。
そこで、首都大の報告内容を元に、その仕組みを噛み砕いて解説していきたいと思います。
目次
運営者一押しのランチ店リストはこちら >>
川越が日本一暑い街かもしれない?
2017年5月末、英気象学会誌の電子版に次のような研究結果が掲載されました。
「首都大で行った独自の気象観測によって、埼玉県川越市の方が同県熊谷市よりも最高気温が1~2度高いことが分かった」。
熊谷市といえば、日本有数の「暑い街」として有名な地域です。
そんな恐ろしい街よりも、私の住んでいる川越の方が暑い…?私もにわかには信じられませんでした。
確かに「異常に暑いな」と感じたことは何度かありましたが、熊谷を超えることはないだろうと思っていたのです。
しかし、首都大の三上岳彦名誉教授はこう話しています。
「典型的な夏日のときは川越の方が常に暑い」と。
毎年恒例の暑さ争いで川越が取り上げられなかった理由
「川越の方が熊谷よりも暑い」。
どうして今までその事実に気が付かなかったのか…。
その答えは、気象庁の気象台やアメダスが、川越には配置されていないからです。
埼玉県内には熊谷市や秩父市、さいたま市などに気象台やアメダス(気象観測所)が設置されているのですが、川越市にはそういった設備がありません。つまり、川越市の気候は気象庁の観測対象外だったのです。
一方、首都大の研究チームは、川越市を含む首都圏約200か所に独自の観測網を展開していました。そして、2006年~2010年までの猛暑日について調査した結果、「気温の最も高かった街は川越だった」ということが分かったのです。
【Tips】気象台がないのに川越市の天気予報が見られるのは何故?
川越市には気象台やアメダスがないにもかかわらず、「川越市 天気」などで検索すれば、川越の天気予報を見ることができますよね。これは、気象庁の「数値予報」というシミュレーション結果から、今後の天気を推定することができるためです。
ただし、きちんとした観測は行っていないため、予報をすることはできても、その情報が本当に合っていたのかどうかまでは判定できていません。
つまり、「予報こそしているものの、その答え合わせはできていない」状態が長年続いているということです。
【Tips】研究チームはなぜ数年分の気象データを持っていたのか?
事の始まりは、2003年に始まった「メトロス」から。当時の都知事・石原慎太郎氏は、都の環境政策のひとつとして「ヒートアイランドの緩和」を打ち出しました。
首都大の研究チームは都の委託を受け、都心部の気候の実態を調査。東京都内の約100か所で観測を行ったそうです。
都の事業は2005年で終了しました。しかし、研究チームはそのまま観測を続行。
後に規模を拡大し、2006年には首都圏にオリジナルの観測網「広域メトロス」を作ったのです。観測点は約200か所。これは、気象庁が展開しているアメダスよりも1桁多い数字です。
広域メトロスでは、小学校の百葉箱などに気温の自動測定器を設置し、10分毎のデータを収集・分析。測定は厳密に検定しており、精度も十分であると三上教授は話しています。
ちなみに研究チームによると、川越市立芳野小学校の辺りが、川越の中で最も気温が高いスポットなのだそうです。
川越市立芳野小学校
周辺は田んぼのはずですが、ここが一番暑いのですね……。
川越がめっちゃ暑くなるメカニズム
首都大の発表によると、川越がやたらと暑くなる原因は主に2つあります。
【原因1】東京のヒートアイランド現象が海風を阻んでいる
「ヒートアイランド現象」は、都心部の気温が周辺の郊外よりも高温になってしまう現象のことです。
多くの街は都市化することによって土や植物が減り、反対にアスファルトやコンクリートの比率が高まります。すると、その都市の気候が変化し、ヒートアイランド現象が発生してしまうのです。(もう少し説明が欲しい方は、気象庁「はれるんライブラリー」へ。)
川越の気温上昇の原因について、研究チームでは次のような見解を示しています。
- 「東京で起きているヒートアイランド現象が熱の壁となっている。そのため、東京湾や相模湾から北上してくる海風が川越まで届くのに、周辺の街よりも時間がかかってしまう」
- 「1日のうち日差しの厳しい午後1時~3時頃まで川越には海風が来ないから、周辺地域よりも気温が上がってしまう」(大和研究員)
【原因2】上昇したヒートアイランドが川越付近で拡散する
東京都心部で発生したヒートアイランドの壁は上昇気流となり、風にのって北上します。その後、下降して拡散するのが川越付近であることが分かりました。
しかも、気流には下降している間に加熱される性質があります。川越の地上の気温がグーンと上昇してしまうのはこのためです。
一方、東京から約60キロ離れた熊谷には、この下降流が届きません。そのため、「熊谷の最高気温は川越に及ばない」と研究チームは考えています。
ここまでの話を図にまとめてみました
他の「暑さ自慢」の街は、フェーン現象で暑くなる
熊谷市や群馬県館林市、岐阜県多治見市などが暑くなる原因は、フェーン現象の影響が大きいといわれています。
フェーン現象は、水蒸気を含む空気が山を越えたとき、風下側の気温が上昇する現象です。(もう少し説明が欲しい方は、気象庁「はれるんライブラリー」へ。)
研究チームでは、「東京のヒートアイランドが川越に及ぼす影響の方が、フェーン現象よりも大きい」と見ています。
今後の展開は?
「公式な気温データを見てみたい」という方も多いかと思いますが、残念ながら気象庁ではアメダスの増設は考えていないとのことです。
アメダスの設置は容易なことではなく、気象庁の山口章吾地域気象観測係長は「防災や生活環境の観点から今の配置が最適」と話しています。
(以上、参考:日本経済新聞『「暑さ日本一は川越」 熊谷や多治見とココが違う 』、『埼玉・川越が暑さ日本一? 首都大東京、独自に観測』)
川越観光でおすすめのクールスポット
「川越は暑いから…」なんて理由で、川越観光を断念するのはもったいないです!というわけで、私が観光エリアを散策する際、避暑のために利用している施設をご紹介します。
暑さにまいってしまったときは、ココに逃げ込んでくださいね。
蓮馨寺の境内(無料)
真夏日でもココだけは本当に涼しいです!気温が全く違うので、ずっとここにいたくなります。
蓮馨寺自体が人気の観光スポットのひとつなので、ぜひ立ち寄ってみてくださいね。
-
諸願成就 おびんずる様の蓮馨寺 境内には焼きそば・だんごの売店も
蓮馨寺
元町休憩所(無料)
2015年4月にオープンした無料休憩所。川越まつり会館の駐車場に隣接しています。
約100人が同時に利用できるほど広い上に、自販機や綺麗なトイレ(男女、多目的)、多目的室、授乳室などを完備。飲食もOKです。
存在を知っているだけでかなり便利なスポットなので、上手に活用してくださいね。
自販機では、よーく冷えた「川越の水」も販売しています!
元町休憩所
川越市の指定暑熱避難施設(川越ひと涼み処)
川越市は2024年6月17日~10月23日まで、市内の一部公共施設を「指定暑熱避難施設(川越ひと涼み処)」として開放しています。
観光エリアの近くにもあるので、積極的に活用してくださいね。
-
【2024年】指定暑熱避難施設「川越ひと涼み処」開設!スポットまとめ
暑い日におすすめの川越観光ルート
気温の高い日は外を歩くのがとても辛いはず。下の記事では夏向けの川越観光コースを紹介しています。ぜひ参考にしてくださいね!
-
夏の川越へ遊びに行こう!おすすめ観光コース・一押しスポットまとめ
続きを見る
▼ 暑い日に食べたくなるおすすめアイスはこちら
-
地元民一押しの川越ご当地アイス・かき氷リスト!暑い夏の納涼に
続きを見る