川越の観光スポットや名物に度々登場する「初雁」「はつかり」という名前。今回は、なぜ川越市内で「初雁」という言葉がよく使われているのかについて解説します。
「初雁」とは
(出典:Wikipedia「雁」)
そもそも「初雁」とは、秋になって最初に北の方から渡ってきた雁(かり、がん)のことを指します。
雁はカモ科の水鳥です。
昔は狩猟の対象でしたが、急速に数が減少したため、現在は保護鳥の対象となっています。
意外となじみ深い雁
「雁ってほとんど見たことないし、全然なじみがない」という方も多いかもしれません。
しかし、私たち日本人がよく食べる「がんもどき」の「がん」は、まさにこの鳥のことなのです。
「がんもどき」という名前の由来については諸説あります。
最もポピュラーなのは、「雁(がん)の肉に味を似せた精進料理(もどき料理)で、肉の代用品として作られた」という説です。
「雁擬き」と当て字で表記されることもあります。
昔から童話や小説などにもよく登場していた雁。
例えば、椋鳩十の「大造じいさんとガン」は、教科書で読んだことがある方も少なくないはず。
また、井伏鱒二の「屋根の上のサワン」の「サワン」は雁のことですし、日本でアニメにもなった児童文学、セルマ・ラーゲルレーヴの「ニルスの不思議な旅」にも登場しています。
川越の「初雁」、由来は川越城七不思議から
(出典:Wikipedia「三芳野神社」)
川越で「初雁」という言葉がよく登場する由縁は、この地に古くから伝わる昔話「川越城七不思議」のひとつ、「初雁の杉」にあります。
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わらべ歌「とうりゃんせ」発祥の地といわれている、川越市の三芳野神社。
平安時代に創立したこの神社の裏には、とても見事な杉の木が立っていたそうです。
秋のある日のこと。
北方から飛んできた初雁が、杉の上で三声鳴きながら三度回り、南方へ飛び去っていったそうです。
この光景は毎年同じ時期に見られ、雁が来なかった年はないといわれています。
このことから、この杉は「初雁の杉」と呼ばれるようになりました。
その後、太田道真・道灌の親子が三芳野神社のある場所に川越城を築城。
三芳野神社は「川越城の敷地内に鎮座している神社」となったのです。
(わらべ歌「とうりゃんせ」は、庶民が「城内にある三芳野神社にどうやって参拝するか?参拝した後はどう戻ってくるか?」、と考えあぐねている様子を歌ったものだといわれています)
築城祝いの宴のときにも、初雁の杉には初雁が飛来しました。
それを見た道灌が、川越城を別名「初雁城」と命名したといわれており、現在も市内各所にその名残が残っています。
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「初雁」の付く施設・商品
「初雁」は、市内の様々なお店の名前や会社名、学校名などで使われています。
はつかり醤油(松本醤油)
はつかり醤油の特徴は、天然醸造で2年熟成の再仕込み醤油であること。
通常、醤油の熟成期間は1年なのですが、はつかり醤油はその倍の時間を使って熟成させています。
色、味、香り全てが上質。
この醤油を使って作った料理は、ひと味違いますよ!
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はつかり胡麻ドレッシングが大人気!松本醤油商店の蔵を見学
小江戸はつかり温泉
(出典:公式サイト)
地下1700mより汲み上げた天然温泉「野天風呂」など、様々なお風呂があるスーパー銭湯。
広いリクライニングルームや蔵書5000冊のコミックコーナー、家族で使えるキッズコーナーも完備しています。
アクセス:東武東上線「上福岡駅」もしくはJR川越線「南古谷駅」から西武バス 「城北埼玉高校入口前」下車 徒歩約15分
初雁公園(初雁球場)
川越城本丸御殿のすぐ横にある公園。
公園内の野球場は、高校野球の予選会場としても利用されています。
初雁高校
昭和58年創立の県立高校。
同じ校舎内には、県立川越特別支援学校川越たかしな分校が設置されています。
川越を観光するときは、ぜひ「初雁」「はつかり」という文字を探しながら歩いてみてください。
今まで気が付かなかった、新しい発見があるかもしれません。