2021年3月8日、川越市松江町に文化体験施設「百足屋(むかでや)」がオープンしました。
目次
川越で日本の伝統文化を体験「百足屋(むかでや)」
「百足屋」は、築380年の「田口家住宅」を再生・利活用した文化体験施設です。茶道や書道、日本舞踊、そば打ち、キツネ面の絵付けなど、日本に伝わる様々な伝統文化を体験することができます(予定)。
1階の店蔵にはカフェも併設。河越抹茶や狭山茶を自分で点てて味わえます。
▼ 河越抹茶についてはこちら
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狭山茶の原点!川越の特産品・河越抹茶の特徴とその歴史とは
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また、内蔵では着物のレンタルも可能です。百足屋は蔵造りの町のすぐそばにあるので、そのまま和装で街を散策するのもおすすめですよ!
店先にある真っ赤なレトロポストが目印。今でも現役で使えます。
注意
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、当面の間は体験施設の利用ができません。
また、緊急事態宣言中は、営業時間が11時~17時に変更されています(通常10時~17時)。
川越市の有形文化財、田口家住宅の歴史と特徴
百足屋は1639年(寛永16年)に田口吉兵衛が創業した、糸・組紐や鰹節を取り扱う問屋です。
川越市の有形文化財に指定されている木造2階建ての店蔵は、1896年(明治29年)12月に建てられました。内蔵は明治41年、外蔵は昭和3年に建てられたものです。
百足屋は第2次世界大戦時に行われた経済統制の影響で廃業してしまったものの、建物には全盛期の面影が色濃く残っています。
屋根の巴瓦に吉兵衛の「吉」の文字が見て取れました。
田口家住宅の造りは一番街で見られる他の蔵造り建築に比べ、あまり重々しいイメージがありません。そのように見える理由として、2階の観音扉の構造があげられます。
窓の造りを見比べてみてください。田口家住宅の窓の扉は、一番街の蔵のものより明らかに薄いですよね。
ちょっと心許ない印象を受けてしまいますが、観音扉に銅板を貼ることで耐火性を高めているそうです。
川越と大火
明治26年(1893年)3月17日、川越で「川越大火(かわごえたいか)」が発生しました。この火災により、当時の町域の約3分の1、1,302戸が焼失したと言われています。
一方で、焼失を免れた家屋はいずれも耐火建築の「蔵造り」でした。その性能の高さを再認識した町人たちは、蔵造り建築による町の再建を決行。約3年のうちに200棟以上の蔵造りが建設されました。
明治29年に建てられた田口家住宅は、まさにこの復興の最中に建てられたものとなります。
間口が広く、袖蔵(そでくら/収納蔵、主屋の防火壁としても機能する蔵)を持たない構造も、他の店蔵にはない田口家住宅の特徴のひとつと言えます。
また、店蔵のすぐ横に住居があり、潜り戸を抜けると井戸や住居の入口がある造りも他ではあまり見られません。この構造により、田口家の建物は外から住居空間へ容易にアプローチできるようになっています。
田口家と郵便ポスト
田口家は明治時代から切手類の販売も行っていました。田口家の前に郵便ポストがあるのはそのためです。
実はこの郵便ポストも、今となってはかなりレアなもの。
関東郵政局からの通達により、一定規模の都市では昭和60年(1985年)3月末をもって、このような丸型ポストは角型ポストへ交換することになっていました。
しかし、写真のポストは田口家の蔵造りによく合っていたことから、使える状態のまま残されることになったのです。
百足屋のカフェで和スイーツを堪能しよう
オープン日の21年3月8日にカフェを利用してきました。
知らない人のお宅へ訪問するような気分です。玄関先でキョロキョロしていたところ、店員さんが「中へどうぞ」と笑顔で迎えてくれました。
ちなみに、↑ の写真の左手側には素敵な花手水があります。
その裏側には井戸がありました。
井戸の後ろに郵便のマークが見えますね。「切手類」「印紙」と書かれていました。田口家が切手類を販売していた頃の名残でしょう。
昭和55年(1980年)、田口家は関東郵政局から郵便切手類の優良売り捌き人として表彰を受けています。
さて、靴を脱いで店内にあがりましょう。
脱いだ靴は下駄箱へ。
カウンターで簡単な受付を済ませます。今回はカフェ利用のみだったため、すぐテーブルへ案内してもらえました。
はつかりの間でいただく河越抹茶と上生菓子
店員さんと一緒に、板の間6畳の「はつかり」へ。すぐお隣に、畳8畳の「やまぶき」の間もあります。
店内は比較的賑やかでした。決して騒ぎ声が聞こえるわけではなく、適度で居心地の良い賑やかさです。
店員さんもお話しやすい方が多く、メニューの内容について細かいことまで教えていただけました。
今回は「自分で点てる河越抹茶と季節の上生菓子のセット」と「抹茶わらび餅と白玉のクリームあんみつ」を注文。
すぐに上生菓子が配膳されました。川越の老舗和菓子店、紋蔵庵のお菓子とのことです。中に餡子が入っていました。
お茶菓子をいただきながら、動画でお茶の点て方を勉強します。
(動画の女性の顔ですが、とんでもない半眼になってしまったのでぼかしを入れております)
ほどなくしてお茶のセットが届きました。動画終了後、店員さんが改めて点て方の要点を簡単に説明してくれましたが、上手くできる気がしません。
とはいえ、どうせ失敗したところで飲むのは自分だけです。部屋も貸し切り状態だったので、思い切って挑戦してみました。
河越抹茶の粉。すでに良い香りです。
茶碗に粉を入れて、鉄瓶のお湯を注いで、茶せんでM字に……。どうしよう、なかなか泡が立たない。
お茶会や茶会体験にはたまに参加するので、飲む方の作法はそれなりに分かるのですが。きちんと点てられるようになるためには、やはり練習が必要そうです。
この後、一応少しだけ泡立ったので、河越抹茶の味と香りを楽しみました。
抹茶の点て方
後日リトライするために、ポイントなどをまとめました。ぜひ皆さんも参考にしてください!
点て方のお手本
抹茶が泡立たない原因は、主に4つあるそうです。
泡立たない原因
- 茶碗が十分に温まっていない。
- お湯の温度が低すぎる。
- 抹茶の量が少なすぎる。
- 泡立てのスピードが遅すぎる。
恐らく今回の敗因は、抹茶の量と泡立てスピードにあったのだと思います。
繰り返しになりますが、どうせ失敗しても飲むのは自分です。あまり気負いせず、軽い気持ちで挑戦してみてくださいね。
また、他にも普通の緑茶が飲めるセットメニューはありますし、抹茶ラテやコーヒーなどのドリンク単品メニューもあります。
【後日談】河越抹茶リベンジ
後日、再度「自分で点てる河越抹茶と季節の上生菓子のセット」を注文し、リベンジしてきました。
店員さんのお話によると、やはり「上手く泡立たなかった」というお客さんが多いようです。そこで今回は、店員さんに直接指導していただきました。
その結果、今回は大成功!前回の抹茶と味が全然違いました……。
上手く点てるために気を付けた点は以下の通りです。
- 抹茶は茶杓にこんもりと盛ること。(「こんなに使ったら申し訳ない」とためらうくらいの量)
- お湯は茶碗の1/3くらいまで注ぐこと。
- 腕は使わず、手首のスナップを利かせて混ぜること。
目の前で店員さんにも点てていただいたところ、茶せんの先が茶碗の底につかないよう混ぜていました。茶せんと茶碗がぶつかると、どうしても無駄な力が入ってしまい、手首のスナップが弱くなってしまいます。
きっとこれも上手く点てるためのコツのひとつなのでしょう。
川越といえばさつまいも!クリームあんみつはさつまいも入り
楽しみにしていたもうひとつのメニュー、クリームあんみつ。さつまいもとさつまいもチップスが入っています。
甘いもの尽くしの一品ですが、河越抹茶の苦みと相性抜群でした。
【予約制】プライベートな会食にも対応
百足屋ではプライベートな会食も楽しめます。会食は2人から、2日前の予約制です。
料理は、川越の料亭「福登美」の板前さんが百足屋で調理。本格的な季節の会席膳を味わえます。
百足屋の2階でHOゲージ(鉄道模型)鑑賞
※オーブン日は2階が解放されていなかったため、2階部分は3月14日に撮影しました。
百足屋には2階があります。階段が急で天井も低いため、足元と頭上にお気をつけください。
2階に着くと、何やら「シャー…」「ガー…」という音が聞こえてきます。
左手側の部屋の中に、大きなHOゲージが!
日本の主な鉄道模型にはNゲージとHOゲージの2種類があります。違いは縮尺です。
Nゲージの模型は本物の車両の約1/150スケールで、11~15センチほど。線路幅が9ミリ(nine)であることからNゲージと呼ばれています。
HOゲージは約1/80スケールです。模型の大きさは24~30センチ。Oゲージという鉄道模型ゲージの半分(Half)の大きさだったため、HOゲージと名付けられました。
鉄道模型は久しぶりに見ましたが、精巧なつくりですね。
右手側の窓からは、微妙な位置に置かれている瓶が見えます。
どういうわけか、この瓶は地震が来ても落ちないそうです。東日本大震災のときも、あの場所で耐えたのだとか。
百足屋の店蔵で川越土産を購入
カフェでお腹を満たした後は、店蔵でお買い物も楽しみましょう。
待合室を介して店蔵へ。
店内には川越にゆかりのあるお土産品が所狭しと並んでいます。
百足屋オリジナル商品だけでなく、「宇宙人でさえも欲しい川越の手みやげ」を作る「小江戸〇〇屋」のグッズや、櫻井印刷所(川越市)のオリジナルブランド「文星舎」の「川越城下かさね地図」など、幅広くラインナップ。
立派なひな人形も飾られていました。慶応3年(1867年)に10代目・吉兵衛の初ひな祭りで飾られたものです。
田口家には、生後しばらくは男の子を女の子として育てる習わしがあったため、男の子も桃の節句を祝っていたと言われています。
百足屋の中庭へ
玄関まで戻ってきました。
矢印の方向へ進むと、百足屋の中庭に出られます。
看板の矢印の通りに進んでいくと…
小規模ながら素敵な中庭がありました。もう少し気温が温かくなったら、より美しい光景になりそうです。
なぜ「百足屋」なのか、その由来は?
ところで「百足屋」という店名・屋号を見て、「何でそんな名前を付けたんだ……」と思いませんでしたか?
多くの人はムカデに良いイメージを持っていないでしょう。それは今も昔も変わらないはず。
では、なぜ田口家はこのような屋号を付けたのでしょうか。
「百足屋」という名前には、「千客万来」「商売繁盛」の願いが込められていると言われています。「客足が多い」ことと、足をたくさん持つムカデを掛けているのです。
一見ちょっと不気味な名前ですが、意味が分かると納得できますよね。
川越・百足屋へのアクセス
JR・東武東上線「川越駅」から東武バス乗車、「松江町二丁目」下車、徒歩1分
百足屋の近くの観光・体験スポット
百足屋を訪問したら、ぜひ一番街だけではなく、次のスポットにも足を運んでみてください。
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